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能登半島地震での「15分の空白」が決定打に。社員数5,000名超の大規模組織が実現した回答率90%以上の安否確認体制

課 題

  • 内製ツールでは集計データの更新に「15分のタイムラグ」が発生。能登半島地震の際、この空白が意思決定の遅れに直結するという危機感を抱いた

  • また、未回答者の追跡が人手に頼る状態だったため、より適切な情報把握体制の強化が必要であった

対 策

  • 集計データがリアルタイムで反映される「安否確認サービス2」を導入

  • 会社のメールだけでなく、プライベートメールやLINE連携、アプリ通知も活用することで、プライベートでも安否確認連絡に気付きやすい体制を構築

効 果

  • リアルタイムでの状況把握が可能になり、初動対応における意思決定のスピードが向上した

  • 個人情報を閲覧せずに多角的な連絡が可能となり、管理側の負荷が劇的に軽減された

  • 導入後初の全国一斉訓練で回答率約90%、回答時間の最頻値「1分」を記録

動画配信、FX、英会話、EVまで。「誰もが 見たくなる 未来。(DMM)」というコーポレートメッセージを掲げ、17領域・60以上の多角的な事業を展開する合同会社DMM.com。常に変化と進化を続ける同グループは、従業員数5,000名を超える巨大組織でもあります。
テクノロジー企業として高い開発力を持つ同社が、なぜ自社開発(内製)の安否確認ツールから安否確認サービス2への移行を決断したのか。その背景には、2024年1月1日の能登半島地震で直面した「15分の空白」をはじめとする複数の課題がありました。
今回は、Good安否確認賞2025の優秀賞を受賞されたことを受け、組織管理本部総務部の高橋さん、浅井さん、山腰さんに、導入の経緯から独自性の高い運用方法まで、詳しくお話を伺いました。

能登半島地震で露呈した内製ツールの限界。「15分の空白」が命取りに

安否確認サービス2の導入以前のご状況をお聞かせください。

浅井さん:以前は、GoogleフォームとスプレッドシートにLooker Studioを組み合わせた内製の安否確認システムを使用していました。しかし、2024年1月1日に発生した能登半島地震で、私たちの主要拠点の一つである石川県の金沢事業所が被災。この時の対応で、内製ツールの限界と想定外の課題が浮き彫りになったのです。

高橋さん:以前までは「まず身の安全が最優先。災害復旧を務めることができるのは安全に動ける方。そのため、最低限その方々の情報が取れればいい」という考え方で運用設計をしていました。実際に大規模な災害が起きると、経営層や対策本部のニーズはより多面的になります。「連絡が取れない人は何人いるのか」「その人は無事なのか」を徹底的に追う必要が出てきたのです。
しかし、当時のツールでは、そのニーズに応えられませんでした。

具体的に、どのような課題が発生したのでしょうか?

浅井さん:最大の課題は「情報のリアルタイム性」でした。集計結果を表示するダッシュボード(Looker Studio)のデータ更新頻度が、仕様上「15分に1回」だったのです。

平時であれば15分は短い時間かもしれませんが、刻一刻と状況が変わる災害時の初動において、「この15分の空白は意思決定の遅れに直結する」という危機感を強く持ちました。経営層や各事業部の責任者が「今どうなっているんだ」と情報を求めても、システム上の数字は15分前のもののまま。これでは迅速な判断ができません。

また、入力フォームのユーザビリティにも問題がありました。Googleフォームに入力してもらう際、所属部署や名前を手入力する形式だったのですが、入力ミスが頻発しました。例えば、氏名の間に「スペース(空白)」が入っているだけで、人事データとの突合ができなくなってしまうのです。「回答は来ているのに、誰の回答かシステム上で紐付かない」という事態が発生し、集計作業が難航しました。

安否確認サービス2導入前に使用されていたダッシュボード

未回答者への対応はどのようにされていたのですか?

浅井さん:それこそが最も大変な作業でした。システム上で未回答者を抽出するだけでも時間がかかり、さらにその未回答者に対して、人事部のメンバーが「人海戦術」で個別に連絡を取る必要がありました。

電話をかけたりSMSを送ったりと手動で安否を確認していましたが、混乱の中でこのコミュニケーションは被災者側に寄り添ったものでもありませんでしたし、担当者にも過度な負荷がかかりました。実際、能登半島地震の際には、翌日1月2日の14時頃から約100名の未回答者への個別電話連絡を開始。しかし、刻々と変化する被災状況を適切に捉えコミュニケーションが落ち着いたのは1月4日の夕方なので、完了までに3日かかったことになります。

高橋さん:弊社はプラットフォーム運営など、24時間365日稼働している事業を多く抱えています。従業員の安否が不明確なままだと、必要な人員配置ができず、最悪の場合サービス停止のリスクにもつながりかねません。従業員の安全を守ることはもちろん、事業継続の観点からも、従業員の状況を即座に、かつ正確に把握できない点は明確な経営課題だと、経営層も含めて認識しました。これが、システム刷新への決定打となったのです。

選定の決め手は「迷わない操作性」と「API連携」

安否確認サービス2を選定された決め手を教えてください。

浅井さん:選定にあたっては4社ほど比較検討を行いましたが、最終的な決め手は「有事の混乱の中でもマニュアルなしで使える操作性(UI/UX)」と「運用負荷の低さ」、そして「API連携が可能」という点です。

以前のツールは「入力項目が多すぎる」「部署リストの中から、自分の所属を選択するのに手間取る」といった不満が従業員から寄せられていました。安否確認サービス2は、直感的に操作でき、誰でも迷わず回答できるデザインであることが大きな評価ポイントでした。

高橋さん:また、DMMグループは60以上の事業を展開しており、組織の改編や人事異動が非常に頻繁です。災害はいつ起こるかわからない以上、常に最新の従業員データが反映されている必要があります。社内の人事データベースから毎朝自動更新できるAPI連携の仕組みは、私たちにとって必須条件でした。

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自動一斉送信は行わず、「全従業員」へ手動発報。人間が判断するフローをあえて採用

発報のルールはどのように定められていますか?

浅井さん:当社では、地震発生時にシステムが自動で全従業員へ一斉送信を行う設定にはあえてしていません。まず、人事・総務などの管理者7名のみが、震度5弱以上の地震や特別警報の際に自動通知を受け取る仕組みです。そして、その通知をトリガーに、管理者間で協議します。「震源地はどこか」「DMMの拠点への影響はどの程度か」といった情報を確認し、「発報するか否か」を人間が判断するフローを採用しています。

発報範囲はエリアで絞り込むのでしょうか?

浅井さん:発報すると決めた場合は、被災エリアに限定せず、「全従業員に対して」手動で一斉送信する運用にしています。

例えば「石川県で地震があったから、石川県の所属社員にだけ送る」という運用にしてしまうと、出張や帰省で石川に来ている他拠点社員への安否確認が漏れてしまうリスクがあります。「エリアを絞って確認漏れが発生するリスク」よりも、「全従業員に送って安全を確認する確実性」を優先しました。

「プライバシー」と「連絡手段」のジレンマを解消

導入によって、管理者側の負担や意識に変化はありましたか?

高橋さん:まず、管理者の負担は大きく軽減されました。特に、情報の「分断」が解消されたことが大きいです。

以前の運用では、従業員の個人の電話番号などの連絡先は、人事部門のごく一部の担当者しか閲覧できない仕組みでした。プライバシー保護の観点から当然ではあるのですが、有事の際にはこれがボトルネックになります。「連絡がつかない部下がいるが、部長は連絡先を知らない。人事にお願いして電話してもらうしかない」といった状況が発生し、人事部に負荷が集中していたのです。

浅井さん:安否確認サービス2を導入してからは、この問題が解決しました。

システムが仲介することで、管理者は従業員の個人の電話番号やLINE IDを直接閲覧することなく、アプリ通知、LINE、メールといった多様な手段へ一斉にアプローチできます。「個人情報は守りつつ、連絡は確実に届ける」という仕組みができたことで、管理側の実務的な負荷は劇的に軽減されました。

回答の最頻値は「1分」。全国一斉訓練で優秀賞を受賞

合同会社DMM.comは、2025年度の『全国一斉訓練』において、優秀賞を受賞されました。

▼【Good安否確認賞2025】 全国一斉訓練で優秀な成績を収めた10団体を発表
https://www.toyokumo.co.jp/2025/10/10/good-anpikakunin-award2025

全国一斉訓練に参加された理由を教えてください。

浅井さん:導入から約1年が経過し、能登半島地震の経験を経て整備してきた自社の緊急時対応体制が、世の中の企業と比較してどのレベルにあるのか、客観的に測りたいと考えたのが参加の理由です。

いくら社内で「準備できた」と思っていても、実際の数値として他社と比較してみないと、自分たちの現在地はわかりません。純粋な意味での実力試しでした。

高い回答率を実現するために、どのような取り組みをされましたか?

浅井さん:訓練に向けては、全従業員への周知はもちろん、管理監督者が集まる会議での共有に加え、訓練の前月には全従業員必須のeラーニング形式で「緊急事態対応教育」を実施しました。

単に「訓練があるから答えてください」と伝えるのではなく、「なぜ安否確認が必要なのか」「DMMとしてどう対応するのか」という背景から教育を行ったことが奏功したと思います。

その結果、回答率は内製ツール時代の66%から、今回の訓練では約90%へと大幅に向上しました。特に驚いたのは回答のスピードです。回答時間の最頻値が「1分」という結果になり、従業員一人ひとりの防災意識の高さと、システムの使いやすさが数字として証明されました。

また、訓練時間を予告しない「抜き打ち」形式に近い形で行ったにもかかわらず、これだけの結果が出たことは、組織として大きな自信になりました。

訓練で見えた「潜在的単独ツール依存状態」のリスク。次なる改善へ

訓練を通じて、新たな課題や気づきはありましたか?

浅井さん:はい、非常に大きな気づきがありました。それは「回答手段の偏り」です。LINEやアプリ通知が主流だろうと予想していたのですが、蓋を開けてみると「メール通知で知って回答した」という従業員が全体の53%を占めていました。これは、業務中にPCを開いている従業員が多いためだと推測されますが、ここまでメールに依存しているとは想定外でした。

山腰さん:ただ、当日は一部の従業員から「メールが届かない」という問い合わせがありました。調査したところ、個人のメールサーバーの状況(容量オーバーや受信設定など)によって届いていないケースがあることが判明しました。

この結果を受けて、メールだけに頼るのではなく、LINEや専用アプリなど、「複数手段を登録すること」をより強く推奨していくようマニュアルを改訂しました。こうした具体的な改善点が見つかったことも、訓練に参加して得られた大きな収穫です。

最後に、今後の展望をお聞かせください。

浅井さん:現在は安否確認ツールとしてのみ利用していますが、今後は緊急対策本部内の連絡や指示出しのツールとしての活用も検討中です。対策本部内のやり取りは現在Slackで行っていますが、安否確認サービス2との連携を深めることで、よりシームレスな情報共有が実現できるはずです。能登半島地震という実体験から得た教訓を風化させず、今後も訓練などを通じて、全社の防災力を高めていきたいですね。

素敵なお話をありがとうございました。今後の防災・BCP対策においても引き続き安否確認サービス2をお役立てください!

※掲載内容は取材当時のものです。

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